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第1部まとめ・あらすじ






樅ノ木は残った」第1部⑨⑩⑪⑫にわけてYouTube にアップしたものを、音声をつなげて<こがらし>~最後の<雪>までひと息にお聴きいただけます。
各章のあらすじと題の由来
第1章 序の章
幕府老中から伊達陸奥守、綱宗に逼塞が命ぜられる。明くる夜、綱宗の側近4名が暗殺される。その家族、畑宇乃、虎之助、宮本新八はその場から逃れ、原田甲斐に保護される。
第2章 女客【湯島の別宅のおくみを朝粥の会に客として迎える】から
原田甲斐宗輔は国許の茂庭佐月に手紙を書いている。里見十左衛門と伊東七十郎が登場する。国から甲斐の妻、律が無届で出府し湯島のおくみの元へ身を寄せる。
第3章 朝粥の会【甲斐が催す恒例の朝の集まり】から
甲斐はよく朝の食事に人を招く。客は身分の上下を問わず呼ばれるが、皆一様に甲斐の人柄に魅せられ、打ち解けて話をする。この日は里見十左衛門と伊東七十郎が客で、諸家へ出入りし情報通の七十郎が能弁に語る。
第4章 夕なぎ【側近暗殺者たちの処遇が穏便に収められたことから、本分に言及はない】
評定役の会議で、暗殺者たちの処遇について揉めているところに、伊達兵部が突然現れ口を挟み、暗殺者たちを不問に付すよう導く。もめごとを大きくして幕府から目を付けられることを怖れる評定役たちはそれを受け入れる。
第5章 挿花【宇乃との出会い】からか
塩沢丹三郎の家に預けられていた宇乃と虎之助は良源院へ移され、そこで原田甲斐と対面する。宇乃は遠目に見ただけだった甲斐に、実際対面し昔からよく知っていたような親近感(恋心?)を覚える。甲斐は自分が大事にしている庭の「樅ノ木」を宇乃に大事にしてもらいたいと告げる。この「樅ノ木」は原田甲斐そのもののような存在(-いかにも寒さの厳しい土地の木らしく、性が強そうに見えるが、宇乃には、なんとなくさびしげな孤独の姿をしているほうに見えた―本文より)
第6章 風のまえぶれ【さらに深まる兵部の陰謀の先ぶれ】本文に言及ないが
湯島の別宅を抜け出した甲斐は、国許から出てきた伊達安芸(政宗の娘婿)と茂庭周防と内密に会って、周防から伊達兵部の陰謀について報告を受ける。甲斐の妻、律は良人に何かを訴えたいもようだが、甲斐は妻を近寄せない。
第7章 世間の米【おみやのセリフ、あなたのお年では世間がわからないから、自分だけの考えでなにかするのは危ないわ…】より
渡辺九郎左衛門の側女だったおみやが偶然、国許へ護送途中逃げてきた宮本新八に出会い、自分の家へ連れかえる。新八はおみやの兄、柿崎六郎兵衛に兄から聞いた伊達兵部の企みを語る。六郎兵衛はおみや(渡辺)と新八(宮本)双方の話から兵部陰謀の核心を握る。
第8章 こおろぎ【おみやからの色仕掛けを拒んだ時こおろぎの声が聞こえる】
おみやは16歳の若侍新八を弟のように見ていたが、いつしかその肉体的魅力にひかれある夜寝ている新八に抱きつく、しかし、新八は拒み、おみやは涙を流す。
第9章 石火【襲われた柿崎六郎兵衛の刀が路上の石に当たり火花がとんだ】から
柿崎六郎兵衛が宇田川町の伊達兵部邸を訪れる。兵部の策謀のすべてを知っていると脅し金を出すよう、そして今後役に立とうと持ち掛ける。帰路、家老の新妻隼人に命じられた渡辺七兵衛に柿崎六郎兵衛は襲われるが撃退する。
第10章 柳の落ち葉【甲斐が覚書を書いていた机に黄ばんだ柳の葉が散りこんで来た】から
幕府老中、酒井雅楽頭から呼び出され、伊達藩重臣7人が赴く。幕府側は2歳の亀千代の相続は認めない見解を示すが、将軍側近の久世候の口添えがあり、再び酒井邸へ赴き亀千代の相続が承認される。中黒達哉に江戸へ残るように甲斐が申し渡す。
第11章 菊【茂庭家での密談中に、床の間に飾られた白菊】から
茂庭家に伊達安芸を主賓に8人の客が集まった。その夜甲斐は安芸、周防と密談をする。しかし密告する者が聞いてことを察知し、甲斐は周防たちとは距離を置く姿勢をあえて聞かせる。それは伊達兵部に報告される。
第12章 孤燈のかげ【甲斐の前から傷心を抱えて去る綱宗の姿を手燭の光がぼうとうつす・・・】からか
幕府から亀千代の跡目相続を認める墨印を与えられ、伊達藩一同安堵する。中黒達哉が切腹しようとしたのを呼び寄せ、原田甲斐の意図する企てに助力するよう、事の次第を明かして命じた。甲斐は綱宗に伺候するため品川の下屋敷を訪れるが、傷心の綱宗は深酒をし、甲斐にその胸の内を訴える。
第13章 霜柱【11月の良く晴れた日の朝から場面が始まる】この季節感からか
おみやが浄妙院の住持のところへ夜の相手をするために通っていることを新八は突き止め苦悩する。おみやの兄、柿崎六郎兵衛が久々に帰ってきて、おみやに武家の屋敷奉公をさせるために妹を連れ出す。
第14章 こがらし【全編にわたり冷たい北風が吹いている】
柿崎六郎兵衛は新八をそそのかし、良源院に預かりになっている宇乃と虎之助を連れ出そうとするが、麻疹に罹っている虎之助を見舞いに訪れた塩沢丹三郎が、それがかどわかしであると気付き、機転を利かせて他藩の家臣に助勢を頼み、無事二人を救出する。
第15章 貝合わせ【よく分からず、YouTubeをご視聴の方に教えていただきました】
お寄せいただいた文章をそのまま、転載致します。
甲斐と貝を掛けているのは間違いないと思います。そして、描かれている内容が甲斐とそれを取り巻く人々との考えや意見の食い違い等のチグハグは、遊びの貝合わせと同じように意見・考えの一致を探しているようなので、表題と本章の相関性を感じます。(B.I.様より)
朝粥の会の中に、①「決めつける」②「決めつけられる」という言い回しが出てきます。①は、愚直な国老・柴田外記が、陸前の金山は一ノ関殿に属するか本藩か、さらに一ノ関殿の自分年貢の江戸回送という不審について、甲斐の本音が聞きたい。甲斐は自分と同じ考え、対になれる片割れであってほしいと願っていた。それなのに甲斐からは、にべもない建前で返されて腹を立て、「お前はそんな男だったのか」と決めつけて席を立つ。②は、会に同席の老女鳥羽が始終、甲斐をウットリとした目で見つめていた、と伊東七十郞から「決めつけられた」ことについて、甲斐は「(柴田翁に)教えてやればよかった。そうすれば、誰が決めつけられたのか、わかっただろうにな」と、冗談めかしてやんわり、切り返します。貝合せのビンゴは、鳥羽と自分でしたよと…。柴田翁の考え方が自分と「対になる片割れ」であったとしても、「耳」のある場では、けして本音を漏らさない。原田甲斐は、痛ましいほど孤独な“樅ノ木”ですね。(Y. A.様より)
追記:国老・柴田外記から甲斐に向けられた確認の問いとやり取りを指している、という見方に変わりはないのですが、時間をおいて振り返りますと、なにか重層的なものがあるようにも感じられます。 裏では涌谷殿(安芸)が愚直な柴田老に情報の種を仕込んで、朝粥の会での甲斐の腹の内を瀬踏みする。これもひとつの「貝合わせ」ですし、甲斐のさばき方もまたそう、と言えなくもありません。(Y. A.様より)
貝合わせ」の貝は甲斐(出貝)とかけていて また、外記(地貝)と考えが合う、合わないの段を示すための章の様に、思っています。 元々、朝粥の会の出席者面々は反一ノ関の様に思われ、地貝の外記も反一ノ関ですが、金山の所有に関しての考えが とりあえず真っ向衝突の態で、この先のストーリーを暗示させる意味深な章ですね。(S.K.様より)
あらすじは、朝粥の会に国許から出てきた柴田外記らを招くと、外記が金山の金が藩と兵部のどちらのものになるかと甲斐に尋ねる。甲斐の答えが兵部に利する点、また国許の涌谷様から、甲斐が一ノ関の尻押しで国老になると聞いているのとで、甲斐がすでに「一ノ関側」に与するとみて、憤慨し帰ってしまう。
第16章 あやめもわかず【「文目もわかぬ」(物の区別もつかない)より】
ご視聴いただいたK.M.様からのコメントで上記のような意味ではないかと教えていただきました。さらに花の「あやめ」が「菖蒲」と区別しにくいように、どちらの勢力に与するか定かでない甲斐の態度を示すのかとも考えられます。
あらすじは、酒井雅楽頭が湯島の甲斐の隠宅に立ち寄る、その意図は不明。湯島のおくみの寝間で甲斐と周防が密談。友を危険から遠ざけるためか、真意は伝えず、目的遂行のために敵の側に身を投じていかんとする甲斐。友達同士の互いへの思い遣りがそっと交わされる。
第17章 雪【12月末の場面、最後には雪が降ってきます】(分かりやすくて、よかったです)
酒井雅楽頭が湯島の隠宅に甲斐を訪ねてくる。盃を受け取る、受け取らないで少々もめるが、おくみの機転で大事にならずに済む。酒井侯の訪ねてきた理由は、分からない。甲斐がおくみに触れないのは、おくみを不幸にしたくないからだと甲斐は言う。良源院の虎之助の麻疹の予後はよくない。見舞った折、宇乃が成熟した娘のように感じられ、42歳の甲斐はうろたえる。そして甲斐は船岡へ帰ってゆく。(第1部 終わり)
(断章は省略)
